Productの構成要素 「参加者」

イベントというプロダクトには、開催者が直接用意することはできないが、それが十分に備わらないとイベントの魅力が低下する、「参加者」という異質な構成要素があります。

 

エンターテイメントコンテンツを提供するコンサートや、順位やタイムという競争や達成感を提供するマラソン大会では、イベントの魅力や価値が開催者と参加者双方で共通認識されていることもあり、あまり「参加者」自体がイベントのプロダクトを構成している要素であると意識することは少ないかと思います。(まあ、人が入っていないコンサートほど盛り上がらないものは・・・からも構成要素であることは明らかですが)

 

一方、サイクリングイベントでは順位はつきませんし、走るコースは基本的に誰でも、何時でも走ることが可能な公道を使用しているため、「景色」や「勾配」などコアな構成要素は、イベントに参加しなくとも得ることができます。また「グルメ」も同様に参加しなくとも得ることは可能です。

普通に入手可能なものをパッケージ化して提供するサイクリングイベントに対して参加費を支払うのは、単に「コース案内」や「エイド」など付随機能に魅力を感じているだけでなく、多くの参加者と一緒に走ること自体に魅力を感じている部分があるからだと思います。

 

しかし、サイクリングイベントが持つ特性から何の作り込みも行わないと、後半一人ぼっちで走行する時間帯が発生してしまい、求められている「一緒に走る」という魅力を十分提供できなくなる恐れがあります。

 

<サイクリングイベントが持つ特性>

参加者の平均走力が正規分布していると仮定すると、参加者100人のうち70人は走力23km/h~25km/h(比較計算のための仮定値)の群に属します。前半のエイドはまだ集団がばらけていないため混雑していますが、後半は結構空いてきます。そのような状況でも、この70人の群の中の3人くらいなら、同じようなタイミングでエイド休憩を終えて走り出すこともあるかと思います。

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ここで、23km/hの人と24km/hの人に1分だけ遅れて25km/hの人がスタートした場合、先行した23km/hの人に追いつくのは11.5分後(4.8km走行)になります。24km/hの人には24分後(10km走行)にならないと追いつけません。 

ロードバイクの走行速度は速いため1分で数百メートルもの差がつき、先に走り出した人がすぐに見えなくなりますが、平均走力差は数km/h程度しか無いため、ついてしまった差はなかなか縮まらず、早い人も遅い人も一人旅をしてしまうという特性があります。

 

つまり、「一緒に走る」という魅力を提供するためには、後半のエイドスタート間隔があまり開かないように工夫する必要がありますが、実際に行われている方策としてはエイド通過の終了だけでなく開始時間を設定して、少し集団を再生しているくらいでしょうか。

この逆関門の設定は現場で突然行われると混乱を招きますが、事前に正しく告知することで、景色のいいところでの写真撮影につながったり、エイドをゆっくり楽しんでもらうなど、人の滞留を促してイベントに参加している感の創出にもつながります。

 

エイド通過の開始時間以外の作り込みとして、「折り返し区間」の設定という方法もあります。この折り返し区間では、結構大きな差がついている人たちでもすれ違うことで、お互い一緒にイベントを走っていると感じてもらうことができます。参加者が双方向に走行しても安全が確保できるコースであれば、確実に効果を得られる方法となります。

 

「いしづち山麓SWEETライド」では、コース後半に5km(往復10km)の折り返し区間が設定されています。この設定によりイベント後半でも多くの人とのすれ違いが生まれ、互いに一緒にイベントを走っていると感じてもらえるかと思います。

 

<体験事例>

参加者が61人しかいなかった「下北ぐるりんライド215コース」で約170kmを走った後、尻屋崎への13.5km(往復27km)の折り返し区間において、27kmを走る間に同じ方向に走る人の姿は見かけませんでしたが、10名以上とすれ違い「同じイベントを走っている感」を感じることが出来てその分満足度がアップしました。

 

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